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むかでのあしおと
むかでの跫音
大倉 燁子
「殺人流線型」柳香書院、1935(昭和10)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,542 字 · 23 页
非常な努力と長い時日とを要する仕事なので、その辛棒が彼に出来るかどうかと、実は危ぶまれたのでしたが――。
その時から彼は私に縋って、熱心に鎮魂を始めました。しかし、雑念の多い彼はなかなか魂を鎮めるどころか、日に日に煩悶が加わって来るので、どうにも手のつけようがありませんでした。
『夢はいかがですか』
『やっぱり同じことです』
新生寺さんは瘻れた顔に、淋しい微笑を浮べて答えます。
霊笛と名づくる石笛を私が静かに吹いて、彼の魂を鎮めようとしていると、急に涙にむせび、泣きながら帰ってしまうことなどもありました。もうその頃は物事に感じ易く、何かというと涙を零すようになって、すっかり人間が変ってしまいました。
株に手を出して失敗し、百万円の借金を負い、その始末がつかなかったからという事も彼を自殺させた大きな原因の一つではありますが、夢に悩まされたということは、より大きな原因だったと私は信じます。
本堂の改築にも金が要ります。宗教改革にだって、金がなくては思うように働けません。その資金を檀家に仰がず、自分自身の手でつくり出そうとした。それは彼の主義だったのですが、そのために株に手を出すことにもなったのです。