轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

むかでのあしおと

むかでの跫音

大倉 燁子

「殺人流線型」柳香書院、1935(昭和10)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,542 字 · 23 页

青空文庫

奥書院は建物の一番端れで、特別の用事でもなければ誰も行きませんので、そこに二日間も新生寺さんが留っていたのを誰も知らなかったのです。随分迂闊な話ですが、それが実際のことなのです。

新聞を手にして、急いで奥書院へまいり襖を開けて彼を見た瞬間、私は何がなしにはッと胸を打たれました。

新生寺さんは眼を閉じ、端然と坐っているんです。私が入って来たのもまるで気がつかないように――。

『早く帰られたらどうです。檀家中でも心配していられるようですから』

彼は新聞をちらりと横目で見たなり、眉も動かさないで静かに申しました。

『日が暮れるまで――、どうぞ、――このままそっとしておいて下さい。新聞にまで出されちゃ気まりが悪くて、昼間は帰れません。夜分になったら帰山いたしましょう』

私は仕方なくその儘放っておいたのですが――。

それから一時間もすると、執事が青くなって私の部屋へ飛び込んで来ました。

『先生、大変です。新生寺様が切腹されました』

『えッ? 切腹?』

『早く、どうぞ、早く――』

吃驚して奥書院へ馳け付けました。

苦しげな呻き声は襖の外まで洩れ聞えています。執事の注意で廻らされた屏風の端から中を覗いて、私は思わず顔を反向けました。