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むかでのあしおと

むかでの跫音

大倉 燁子

「殺人流線型」柳香書院、1935(昭和10)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,542 字 · 23 页

青空文庫

5

『オホホ……。遂々敵を取ってやった! オホホッ』

緊張した臨終の部屋の空気を揺り動して、彼は笑いながら、息を引取りました。

広い奥書院にその笑い声が物凄く響き渡って、思わず背筋に冷水をかけられたような寒さを感じたのでした」

5

話に夢中になっているうちに、乗客は一人残らず下車してしまい、がらんとした車室には先生と私とだけが相対しているのだった。

「その若い男の六部というのは――?」

「新生寺さんの前身でしょう」

「では――、伯父が――、その女を殺したと仰しゃるんですか?」

「それは分りません」

「でも、――まさか、――あの伯父が殺人罪まで犯して、平気で坊さんなんかなっているとは思われないけれど――、して、その百足はどうして臨終の時に、出て来たものでしょう?」

「山の中ですもの、座敷の中に百足が入って来る位の事は珍らしくはありませんよ。殊に雨の前なんかには壁にはりついたようになっていることなんか、しじゅうありますよ」

「じゃ、全く偶然ですわね」

「そうです。――しかし、新生寺さんはどういう訳か百足を大変嫌っていましたよ」

「誰だって、先生、あんなもの好きな人はありませんよ。