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もうすこしのしんせつを
もう少しの親切を
宮本 百合子
「白揚」1936(昭和11)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,452 字 · 5 页
と云い「みんな体裁をかまっているから駄目なんですよ」と云っている。深尾氏はお定が変態的であると評されている点が決して変態的でないと主張しておられるのであるが、私が膝を叩いて感じいったことは、私はお定のようになりたくってねえと云わしめた言葉の根底には、世間の大部分の男は「お定の対手になって見たかったと云っていますね」という条件に対する反応の意識が伏在しているのであった。どんなに面白く、思い切って恋愛論をするかというようなことが、せち辛い世の中では、身すぎ、世すぎをもふくめて男のひとに対する女それぞれの一種の嬌態、ジャーナリズムへの秋波としてさえ役立てられているのである。
これらの二重、三重の利害によって夥しく氾濫せしめられている恋愛論が、果して大衆の現実問題としての恋愛、結婚生活の困難、障害を取りのぞくためにどれだけの働きをするであろうか。先ず陸軍大臣が保健省設立を提案するという興味ある形で今日とりあげられている青年男女の体格低下の問題や、婦人労働者の退職手当金の問題、又頻々たる心中事件の意味など、恋愛論が、恋愛論の枠の中を廻っていただけでは解決し得ぬ先行的事情が、附随してとりあげられなければ、実際性は稀薄なのである。