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もうすこしのしんせつを

もう少しの親切を

宮本 百合子

「白揚」1936(昭和11)年9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,452 字 · 5 页

青空文庫

ひとは「物云わねば腹ふくるる」ものである。まともなことが公然と云えなくなると、話が所謂おいろけに傾く。徳川末期は、何故あのように色情文学が横行したかということを私共は真面目に考えるべきであると思う。現代の恋愛論が、多分の猥談的要素に浸潤されていること、両者の区別が極めて曖昧になっているところ。そこでは男も女も卑屈にさせられている。日本的事情というものが斯くの如くにして表われているところに、私は、或る憤りを感じるのである。

杉山平助氏の『婦人公論』における恋愛論は、ジャーナリストとしての技術を傾けて書かれているものであるが、中に短く引用されている加賀耿二氏の文章がある。「労働者に恋愛などという高尚なものはない。あるのは『おい、どうだい?』ばかりである」云々とあり、それを労働者性の如く扱われてあるのである。真に労働者と呼ばれるにふさわしい人々は果して無条件に加賀氏のその結論をうけ入れ得るであろうか。〔一九三六年九月〕