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もくねじ

もくねじ

海野 十三

「譚海」1943(昭和18)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 7,546 字 · 16 页

青空文庫

倉庫

ぼくほど不幸なものが、またと世の中にあろうか。

そんなことをいい出すと、ぜいたくなことをいうなと叱られそうである。しかし本当にぼくくらい不幸なものはないのである。

ぼくをちょいと見た者は、どこを押せばそんな嘆きの音が出るのかと怪しむだろう。身体はぴかぴか黄金色に光って、たいへんうつくしい。小さい子供なら、ぼくを金だと思うだろう。ぼくをよく知っている工場の人たちなら、それがたいへん質のいい真鍮であることを一目でいいあてる。実際ぼくの身体はぴかぴか光ってうつくしいのである。

ぼくは、或る工場に誕生すると、同じような形の仲間たちと一緒に、一つの函の中に詰めこまれ、しばらく暗がりの生活をしなければならなかった。その間ぼくは、うとうとと睡りつづけた。まだ出来たばかりで、身体の方々が痛い。それがなおるまで、ぼくは睡りつづけたのである。

それから数十日経って、ぼくは久しぶりに明るみへ出た。

そこは、倉庫の中であった。でっぷり肥えた中年の人間が――倉庫係のおじさんだ――ぼくたちのぎっしり詰まっているボール函を手にとって、蓋を明けたのだ。

「お前のいうのはこれだろう。