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やんま
やんま
小川 未明
「教育・国語教育 5巻10号」1935(昭和10)年10月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 1,800 字 · 4 页
おばあさんは、また、だれかたもとのあたりにさわったので、はっとして振り向いてみると、先刻の子供が、しつこく自分の後を追ってきたのでした。
これは、人違いでないと思いました。そして、顔に似合わぬ、なんという、いやな子だろうと思いましたから、おばあさんは、怖ろしい目つきをして、にらんだのでした。子供は、おばあさんにしかられると、そのままあちらへ駈け出していってしまったのであります。
おばあさんは、お家へ帰りました。家の人たちが、
「おばあさん、お帰んなさい。」と、いって、出迎えました。それから、「お疲れでしょう。」と、いって、羽織をぬがしてあげにかかると、やんまが、背中にとまっていましたので、
「まあ、おばあさん、こんな大きなやんまが、お背中にとまっていましたよ」と、いって、捕らえてみせました。このとき、おばあさんは、
「やんまが?」と、いって、はじめて、さっき、男の子が、自分の後を追ってきたわけがわかったのでした。
「ああ、それなら、あんな顔をして、にらむのでなかった。」と、おばあさんは、思いました。
けれども、お彼岸のおまいりにいった帰りなので、やんまを助けてやったと思うと、いいことをしたとも考えたのでした。