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らんのはな
らんの花
小川 未明
「真理」1936(昭和11)年6月
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 4,095 字 · 9 页
その中にも、変種があって、葉の色の美しい稀品があります。花もまたいろいろで、一本の茎に、一つしか花の咲かないもの、一茎に群がって花の咲くもの、香気の高いもの、まったく香気のしないもの、その色にしても、紫色のもの、淡紅色のもの、黄色のもの、それらの色の混じり合ったもの、いろいろでありました。しかし、まだ白い花を見なかったのであります。これらのらんには、いずれも高価の札がついていました。
私はこれを見ながら、
「このお茶には、蘭亭の白いらんの花が入っています。」といった、この料理店の主人の言葉を思い出しました。白い花は、もっと珍しいものにちがいない。そして、もっと高価なものにちがいない。
「白い花があったら、幾何するだろうか。」
こんなことも考えました。事実、金さえあれば、新高山の頂にあったというらんも、この手に入るのですが、ここで私の考えたことは、自然の美というものが、はたして、金で買えるものであるかということでした。
これは、商人の場合ですが、こんな話があります。
どちらかといえば、私は、深くわかりもしないくせに、多趣味のほうです。あるとき、街を歩いていて、骨董屋の前を通って、だれが描いたのか、静物の油絵がありました。