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ろまんどうろう

ろまん灯籠

太宰 治

「婦人画報」1940(昭和15)年12月~1941(昭和16)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,222 字 · 74 页

青空文庫

部屋へはいってから、王子の肩を抱いて、王子の顔を覗き、小さい声で言いました。

「お前があたしを嫌いにならないうちは、お前を殺させはしないよ。お前、王子さまなんだろ?」

ラプンツェルの髪の毛は、婆さんに毎日すいてもらっているお蔭で、まるで黄金をつむいだように美事に光り、脚の辺まで伸びていました。顔は天使のように、ふっくりして、黄色い薔薇の感じでありました。唇は小さく莓のように真赤でした。目は黒く澄んで、どこか悲しみをたたえていました。王子は、いままで、こんな美しい女の子を見た事がない、と思いました。

「ええ。」と王子は低く答えて、少し気もゆるんで、涙をぽたぽた落しました。

ラプンツェルは、黒く澄んだ目で、じっと王子を見つめていましたが、ちょっと首肯いて、

「お前があたしを嫌いになっても、人に殺させはしないよ。そうなったら、あたしが自分で殺してやる。」と言って、自分も泣いてしまいました。それから急に大声で笑い出して、涙を手の甲で拭い、王子の目をも同様に拭いてやって、「さあ、今夜はあたしと一緒に、あたしの小さな動物のところに寝るんだよ。」と元気そうに言って隣りの寝室に案内しました。