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ろまんどうろう

ろまん灯籠

太宰 治

「婦人画報」1940(昭和15)年12月~1941(昭和16)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,222 字 · 74 页

青空文庫

食卓の話題は豊富でした。王子は、四年前の恐怖を語り、また此度の冒険を誇り、王さまはその一語一語に感動し、深く首肯いてその度毎に祝盃を傾けるので、ついには、ひどく酔いを発し、王妃に背負われて別室に退きました。王子と二人きりになってから、ラプンツェルは小さい声で言いました。

「あたし、おもてへ出てみたいの。なんだか胸が苦しくて。」顔が真蒼でした。

王子は、あまりに上機嫌だったので、ラプンツェルの苦痛に同情する事を忘れていました。人は、自分で幸福な時には、他人の苦しみに気が附かないものなのでしょう。ラプンツェルの蒼い顔を見ても、少しも心配せず、

「たべすぎたのさ。庭を歩いたら、すぐなおるさ。」と軽く言って立ち上りました。

外は、よいお天気でした。もう秋も、なかばなのに、ここの庭ばかりは様々の草花が一ぱい咲いて居りました。ラプンツェルは、やっと、にっこり笑いました。

「せいせいしたわ。お城の中は暗いので、私は夜かと思っていました。」

「夜なものか。君は、きのうの昼から、けさまで、ぐっすり眠っていたんだ。寝息も無いくらいに深く眠っていたので、私は、死んだのじゃないかと心配していた。