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ろまんどうろう

ろまん灯籠

太宰 治

「婦人画報」1940(昭和15)年12月~1941(昭和16)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,222 字 · 74 页

青空文庫

寒い冬も過ぎ、日一日と暖かになり、庭の早咲きの花が、そろそろ開きかけて来た頃、二人は並んで庭をゆっくり歩きまわって居りました。ラプンツェルは、みごもっていました。

「不思議だわ。ほんとうに、不思議。」

「また、疑問が生じたようだね。」王子は二十一歳になったので少し大人びて来たようです。「こんどは、どんな疑問が生じたのか、聞きたいものだね。先日は、神様が、どこにいるのかという偉い御質問だったね。」

ラプンツェルは、うつむいて、くすくす笑い、

「あたしは、女でしょうか。」と言いました。

王子は、この質問には、まごつきました。

「少くとも、男ではない。」と、もったいぶった言いかたをしました。

「あたしも、やはり、子供を産んで、それからお婆さんになるのでしょうか。」

「美しいお婆さんになるだろう。」

「あたし、いやよ。」ラプンツェルは、幽かに笑いました。とても淋しい笑いでした。「あたしは、子供を産みません。」

「そりゃ、また、どういうわけかね。」王子は余裕のある口調で尋ねます。

「ゆうべも眠らずに考えました。子供が生れると、あたしは急にお婆さんになるし、あなたは子供ばかりを可愛がって、きっと、あたしを邪魔になさるでしょう。