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ろまんどうろう

ろまん灯籠

太宰 治

「婦人画報」1940(昭和15)年12月~1941(昭和16)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,222 字 · 74 页

青空文庫

そういうDさんだって、僕があの人の日常生活を親しくちょいちょい覗いてみたところに依ると、なあに御自分の好き嫌いを基準にしてちゃっかり生活しているんだ。あの人は、嘘つきだ。僕は俗物だって何だってかまわない。事実を、そのままはっきり言うのは、僕の好むところだ。人間は、好むところのものを行うのが一ばんいいのさ。脱線を致しました。僕は、精神的だの、理解だのの恋愛を考えられないだけの事です。王子の恋愛は正直です。王子のラプンツェルに対する愛情こそ、純粋なものだと思います。王子は、心からラプンツェルを愛していました。

「死ぬなんてばかな事を言ってはいけない。」と大いに不満そうに口を尖らせて言いました。

「私は君を、どんなに愛しているのか、わからないのか。」とも言いました。王子は、正直な人でした。でも、正直の美徳だけでは、ラプンツェルの重い病気をなおす事は出来ません。

「生きていてくれ!」と呻きました。「死んでは、いかん!」と叫びました。他に何も、言うべき言葉が無いのです。

「ただ、生きて、生きてだけ、いてくれ。」と声を落して呟いた時、その時、

「ほんとうかね。生きてさえ居れば、いいのじゃな?」