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ろまんどうろう

ろまん灯籠

太宰 治

「婦人画報」1940(昭和15)年12月~1941(昭和16)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 37,222 字 · 74 页

青空文庫

次女は、長男の文才を軽蔑し果てたというような、おどけた表情をして、わざと拍手をしたりした。生意気なやつである。

全部、読み終った頃には、祖父は既に程度を越えて酔っていた。うまい、皆うまい、なかでもルミ(次女の名)がうまかった、とやはり次女を贔屓した。けれども、と酔眼を見ひらき意外の抗議を提出した。

「王子とラプンツェルの事ばかり書いて、王さまと、王妃さまの事には、誰もちっとも触れなかったのは残念じゃ。初枝が、ちょっと書いていたようだが、あれだけでは足りん。そもそも、王子がラプンツェルと結婚出来たのも、またそれから末永く幸福に暮せたのも、みなこれひとえに、王さまと王妃さまの御慈愛のたまものじゃ。王さまと王妃さまに、もし御理解が無かったら、王子とラプンツェルとが、どんなに深く愛し合っていたとしても滅茶苦茶じゃ。だからして、王さまと王妃さまの深き御寛容を無視しては、この物語は成立せぬ。お前たちは、まだ若い。そういう蔭の御理解に気が附かず、ただもう王子さまやラプンツェルの恋慕の事ばかり問題にしている。まだ、いたらんようじゃ。わしは、ヴィクトル・ユーゴーの作品を、せがれにすすめられて愛読したものだが、あれはさすがに隅々まで眼がとどいている。