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わがあいするしじんのでんき(さん)
わが愛する詩人の伝記(三)
室生 犀星
――萩原朔太郎――
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,406 字 · 22 页
がないからね、併し十二年も君より余計に生きていたことは、何と言っても申訳がない、つい、昨日のように思えるが、生きていて物を書くということは偉大なる暇潰しであり、その事の為にずるずるに生きて来たのだ。君とはお互にどちらが先きに死に、どちらが後にのこるということを話し合ったことが、不思議にも一度だってない、君は後事を托するということを決して口にする人ではなかった。そこに他人のうかがえない心の守りを持っていたことは確かである。そういう事を人に言うことが嫌いなたちなのだ。
郵便局の窓口
郵便局の窓口で
僕は故郷への手紙を書いた。
鴉のやうに零落して
靴も運命もすり切れちゃった
煤煙は空に曇って
けふもまだ職業は見つからない。
父上よ
何が人生について残ってゐるのか。
僕はかなしい虚無感から
貧しい財布の底をかぞへて見た。
すべての人生を銅貨にかへて
道路の敷石に叩きつけた
あまりに親友であるために、その真髄のあたいが判らないことがある。判っていてもその半分は萩原の場合に、私自身の中に溶けこませていたからだ。私は多くの萩原の評論風な、たとえば「新しい慾情」とか「虚妄の正義」とか「絶望への逃走」