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わがまち
わが町
織田 作之助
「文藝 第十巻年十一号」改造社、1942(昭和17)年11月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,869 字 · 52 页
しんと寝しずまったマニラの町を山を野を、あの美しい南十字星がしずかに見おろしているのです。」
「あ。」
君枝は声をあげて、それでは祖父はあの星を見ながら働き、父はあの星を見ながら死んだのかと、頬にも涙が流れて、そんな自分の心を知ってプラネタリウムを見せてくれた次郎の気持が、暗がりの中でしびれるほど熱く来た。
次郎と別れて、河童路地へ戻って来ると、祭の夜らしく、〆団治や相場師や羅宇しかえ屋の婆さん達が、床几を家の前の空地へ持ちだして、洋服の仕立職人が大和の在所から送ってくれたという西瓜を食べていた。
「今日びはもうなんや、落語も漫才に圧されてしもて、わたいらはさっぱり駄目ですわ。一日に一つ小屋をもたしてくれたら、良えとせんならんぐらいやさかいな。」
半袖を来た〆団治が言うと、相変らず落ちぶれている相場師が、団扇でそこらばたばた敲きながら、
「〆さん、おまはん一ぺんぐらい、寄席の切符くれても良えぜ。――なあ、お婆ん、そやろ?」
「そうだすとも。大体〆さんは宣伝たら言うもんが下手くそや。みんなに切符くばって、あんたが出る時、パチパチ手ェ敲いて貰うようにせなあかん。