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アテヌキというちめい
アテヌキという地名
柳田 国男
「民間傳承二卷二號」民間傳承の會、1936(昭和11)年10月20日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,097 字 · 5 页
にもそうあるというから、香取郡に同じ名があっても少しも不思議でない。こんなただわずかな当貫というような地名からでも、気をつけて見ればまだいろいろのことが判って来る。すなわち地名はまた埋もれたる史料であったのである。
今日人も省みないアテという一語がかつては弘い地域にわたって、楝の和名であったことが一つの知識である。次には現在の沖縄県や豊後・壱岐などのように、もとはこの地方のオ列音も、よほどウ列音に近く発音せられていたらしいことが、また一つの新しい事実である。それよりも我々にとって重要なのは、このオウチの木が特に千葉県の一部において、地名となって伝わる程度に人の生活と交渉があったということである。これも今後注意していれば、少しずつはそのわけが判明するかと思う。樹名は非常にその木が珍しいか、または巨大であるならば、単なる存在だけからでも地名に採用せられ得る場合はあるが、オウチの木はその現状から推して考えると、どうもそればかりの理由ではなかったようである。
昔は京都ではこの木を獄舎の門に栽えてあって、罪人の首を斬ってこれに懸けたことが、『源平盛衰記』その他の軍書に何箇所も見えている。