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アテヌキというちめい
アテヌキという地名
柳田 国男
「民間傳承二卷二號」民間傳承の會、1936(昭和11)年10月20日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 2,097 字 · 5 页
正しい記録では『水左記』の康平六年二月十六日の条に、安倍貞任以下の首級を都に渡して、西獄の※の木に梟したとあるそうである(古名録巻二九)。これも香取郡などの苦楝木と同じ樹であることは確かだが、この場合にはあるいはアテの木と呼んでいたのではないかと思う。『山州名跡志』の引用した石清水のアテの木には、椏の字を書いているが、これは木篇に悪の字などはない上に、あまり感心せぬからこう改めたので、こんな和製の新字の生まれたのも、本意はやはり獄門の木であったためのようである。ただし獄門には必ずこの木を栽えていたというのみで、他にも同じ木があったという例はいくらもあるゆえに、自分は決してこの木の地名となっている処を、刑場などの跡だろうというのではないが、とにかくにその存在は特に注意せられる事情があって、土地の名にもなり記憶せられることにもなったろうとは考えている。それにはまたアテという日本語の、他の方面の用途をも考え合せる必要がある。アテは大工などの術語では、木材のよくない部分をいうことは前にも書いたが、九州南部の猟夫等の間に伝わっているのは、また一種特別の意味をもっている。