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アド・バルーン

アド・バルーン

織田 作之助

「新文学」1946(昭和21)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,390 字 · 53 页

青空文庫

玉子は浜子と同じように、私や新次を八幡筋の夜店へ連れて行ってくれたので、何にも知らぬ新次は玉子が来たことを喜んでいたようだが、はたして私はどうでしたか。八幡筋の夜店というのは、路地を出て十歩も行くと、笠屋町の通りを東西に横切る筋があります。これが道具屋や表具屋や骨董屋の多い八幡筋。ここでちょっと通りと筋のことを言いますと、船場では南北の線よりも東西の線の方が町並みが発達しているので、東西の線を通りと呼び、南北の線を筋と呼んでいるが、これが島ノ内に来ると、反対に南北の方がひらけて、南北の線が通り、東西の線が筋になる、もっとも心斎橋筋や御堂筋は南北の線だが筋というように例外もあるけれども、八幡筋は東西だから筋、その筋に夜店が出るのです。

この夜店は心斎橋筋を横切って御堂筋まで伸びていたが、玉子は心斎橋筋の角まで来ると、ひょいと南へ曲りました。そして戎橋を越え、橋の南詰を道頓堀へ折れ、浪花座の前を通り、中座の前を過ぎ、角座の横の果物屋の前まで来ると、浜子と違って千日前の方へは折れずに、反対側の太左衛門橋の方へ折れて、そして橋の上でちょっと涼んで、北へ真っ直ぐ笠屋町の路地まで帰るのです。