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アド・バルーン

アド・バルーン

織田 作之助

「新文学」1946(昭和21)年3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,390 字 · 53 页

青空文庫

する瞬間、鳥居の下で再会しよう』との誓約書を取りかわし、人生の明暗喜怒哀楽をのせて転々ところぶ人生双六の骰子はかくて感激にふるえる両君の手で振られて、両君は西と東に別れて、それぞれの人生航路に旅立とうと誓ったのである」

まだこの後十行ばかり書いてありましたが、恥しくなったのでそれは省略しましょう。彼岸の中日に会うことにしたのは、ちょうどその対面の日が三月二十三日だったので、同じ会うなら二十三日よりも中日の二十一日の方がよいという田所さんの言葉に従ったのです。田所さんは仏家の出で、永年育児事業をやっている眉毛の長い人で、冗談を言ってはひょいと舌を出す癖のあるおもしろい人でした。田所さんのお嬢さんは舞をならっているそうです。

新聞にはその日のうちに西と東に別れたように書いていたけれど、秋山さんが私と別れて四国の方へ行ったのは、それから半月ばかりたってからだった。一方、私は相変らず大阪に残って紙芝居。ところが、世間というものはおかしなもので、そんな風に二度まで新聞に書かれたためか、私はたちまち町の人気者みたいになってしまった。何しろ世を挙げて宣伝の時代、ある大きな酒場では私をボーイに雇いたいと言ってきました。