轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

アンゴウ

アンゴウ

坂口 安吾

「サロン別冊 特選小説集・第二輯」1948(昭和23)年5月20日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,249 字 · 23 页

青空文庫

まるで四谷怪談のあの幽霊の執念に似ている。これを神の意志と見るにしても、そら怖しいまでの執念であり、世にも不思議な偶然であった。

矢島が感慨に沈んでいると、その人は曲解して

「僕も実はタケノコとはいえ愛蔵の本を手放したことを今では悔いているのです。こんな気持であるだけに、あなたのお気持はよく分るのですが、僕の手に一度蔵した今となっては、それを手放す苦痛には堪えられるとは思われないのが本音なのです」

言いにくそうな廻りもった言葉を矢島は慌ててさえぎって、

「いえ、いえ。焼けた蔵書の十冊ぐらい今さら手もとに戻ったところで、却って切なくなるばかりです。僕はたゞ、わが家の罹災の当時をしのんでいさゝか感慨に沈んでしまったゞけなのです」

と、好意を謝して、別れをつげた。

★

その晩、矢島はタカ子にきいた。

「あの本がどうして残っていたか分ったよ。あの本のほかにも十何冊か焼け残った本があったのだ。家の焼けるまえに誰かゞそれを持ちだしているのだよ。君は本を持ちださなかったと言ったね。いったい、誰が持ちだしたのだろう。君が忘れているんじゃないか。あの時のことをしずかに思いかえしてごらん」