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「インガ」

「インガ」

宮本 百合子

ソヴェト文学に現れた婦人の生活

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 14,443 字 · 29 页

青空文庫

ボルティーコフは髯をひっぱりながら、

「何て云うか……勿論俺あここの主人じゃあねえ。工場はお前さんのもんで、お前さんが責任を負ってるんだ。けれど、俺あ、職長として実際の経験から云うのさ。女は――女さ。女んところにゃ、あらゆるでんぐりけえった空想があるんだ。」

ソモフに、たしなめられると、ボルティーコフはふてくされて悪態をついた。

「工場そっくり女にかきまわされて――まともな人間の住む場所がありゃしねえ! モスクワに行くんだ俺あ。そうなりゃ、スカートはいた職長が見つかるだろうよ!」

「追っ払っちまうぞ!」

怒鳴り出したのはソモフだ。

「我々の日常生活ん中で、貴様みたいな見本は――第一の敵だぞ。お前ん中からそいつをたたき出してやるぞ!」

工場管理者代理ルイジョフがインガに対してもっている反感は、しかしもっと複雑な内容をもっているのである。第一、自分は二十六年間生産に従事している労働者じゃないか。しかも四年間は、眠る間だって銃を放さないような生活をして来た。インガが何だ。腐ったインテリゲンツィアの女じゃないか?(糞っ! 今もソモフにそう云ったら、奴は貴様こそ偏見で腐ってると云った。