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ウイツテはくかいそうきそのた

ウイツテ伯回想記その他

平林 初之輔

「新青年 第一一巻第一四号」1930(昭和5)年11月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 993 字 · 2 页

青空文庫

近頃読んだもので、面白かった点からいうと、大竹博吉君の監修で『日露戦争と露西亜革命』という題で上巻と中巻とが出たウイッテ伯の回想記である。

そこには、ロシアの専制政治の実状、宮中や官僚の腐敗の内情から、ニコラス皇帝はじめその周囲の人物の性格が、驚くべき観察眼をもって描き出されていると同時に、ロシアの社会の上下の実相も、一自由主義政治家の眼に映じた限りにおいては正確に描出されている。

さらにこの書物は十九世紀の末から世界大戦前に至るまでの世界の外交界の表裏が手にとるように描いてあるので、暑い夏の日に読んでもちょっと飽くことを知らない書物である。

これは全世界を舞台とした叙事詩であるといえよう。また専政ロシアを西欧型の立憲国にしようとする自由主義政治家の苦闘の記録でもあり、その努力がいかに失敗におわったかを示すボルシェヴィキ革命の前史でもある。ただ個々の事件だけでも、たっぷり大抵の探偵小説位の面白さはある。

探偵小説といえば、こないだ帰った木村毅君に、何か面白い本はないかといって借りた Five Striking Stories というのはそうとう面白かった。