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オフェリヤごろし
オフェリヤ殺し
小栗 虫太郎
「改造」改造社、1935(昭和10)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,366 字 · 58 页
「君は早々に、この事件の賽の目を、二つだけにしてくれた――その事は、何んと云っても感謝するよ。幡江が、自分の仇敵であるロンネから離れられず、あまつさえ、その種を宿しているのだとしたら、風間の憎悪は、第一自分の肉身にかかって行くだろう。また、妻のあるロンネにとると、幡江が仇し子を生むと云う事は、どんなに怖しい事か。そして、幡江から堕胎を拒絶されたとすれば、それは母子ごと葬ろうとしたと云っても、もはや心理上の謎でなくなるのだ。おまけに不在証明はないのだし、六尺豊かなあの男なら、幡江の咽喉を下から刺し貫く事も出来るだろう」
「いや、そうされるのは、多分法水さんの方でしょうよ。いま小保内のやつが、最後の幕で彼奴の胸をぶん抜いてやる――と力味返っていましたぜ」
と背後で太い濁声がしたかと思うと、何時の間にか、そこには淡路研二が突っ立っていた。
この老練な新劇界の古強者は、臆する色もなく、椅子を引き寄せた。彼はずんぐりとした胴に牡牛のような頸を載せていて、精悍そうな、それでいて、妙に策のありそうな四十男だった。
「何しろ小保内には、照明掛りの証言があるんですからね。