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オフェリヤごろし

オフェリヤ殺し

小栗 虫太郎

「改造」改造社、1935(昭和10)年2月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,366 字 · 58 页

青空文庫

たしか、その微妙な秘密の中には、九十郎を再び劇場へ誘ったものがあったに相違ない。そしてその際に孔雀は、恐らく最初の犯行を行ったのであろう。

熊城は、妖しい霧の渦に巻かれているような思いがしたが、なお二つ三つ、残っている疑義を取り纏めねばならなかった。

「それでは、舞台の上にいた孔雀が、どうして奈落の幡江を殺す事が出来たのだね」

「それがこの事件の才智の魔術さ。詳しく云うと、オフェリヤの裳裾と繰り出しの調帯に孔雀が驚くべき技巧を施したからなんだ。君も知っての通り、オフェリヤが小川に落ちたと見せて、幡江が函の中に入ると、下からの風で、裳裾がパッと拡がるじゃないか。そして、その拡がった裳裾を、傘のように凋めながら、如何にもはまり込んで行くかの体で、腰を落して行ったのだ。だが、そうすると熊城君、風が裳裾の周りを激しく吹き上げるので、当然オフェリヤの頭上には、その輪廓なりに、気洞の円柱が出来てしまう。すると、それには対流の関係で、下行する気流が起る道理だから、当然頭上の金雀枝の花弁はあたりに散らばらず、その気流なりに、裳裾の中へ落ちて行くだろう。然しその花弁には、多分クラーレあたりの、皮膚を痳痺させる毒物が塗られていたに違いない。