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オフェリヤごろし
オフェリヤ殺し
小栗 虫太郎
「改造」改造社、1935(昭和10)年2月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,366 字 · 58 页
それなり、バルザックに似た巨躯は、地上から消失してしまい、あの豊かな胸声に、再び接する機会はないように思われた。が、また一方では、それが法水麟太郎に、散光を浴びせる動機ともなったのである。
あの一代の伊達男――犯罪研究家として、古今独歩を唱われる彼が、はじめて現場ならぬ、舞台を蹈む事になった。然し、決してそれは、衒気の沙汰でもなく、勿論不思議でも何んでもないのである。曽て外遊の折に、法水は俳優術を学び、しかもルジェロ・ルジェリ(アレキサンドル・モイッシイと並んで、欧州の二大ハムレット役者)に師事したのであるから、云わば本職はだしと云ってよい――恐らく、寧ろハムレット役者としては、九十郎に次ぐものだったかも知れない。
従って、興業政策の上から云っても、彼の特別出演は上々の首尾であり、毎夜、この五千人劇場には、立錐の余地もなかった。そして、恰度その晩――五月十四日は、開場三日目の夜に当っていた。
ハムレツトの寵妃
登場人物
ハムレツト 法水麟太郎
王クローデイアス ルツドヰツヒ・ロンネ
王妃ガートルード 衣川暁子