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カントとげんだいのかがく
カントと現代の科学
戸坂 潤
「哲学研究 第九巻第一〇五号」
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 11,044 字 · 22 页
の考えに還らねばならぬであろう。さてヘルムホルツの如く Gleichkeit と physische Gleichwertigkeit と解してのみ吾々の経験認識に対してその意味を見出し得ると主張する自然科学的空間説は空間表象の心理的性質を忘れた点にその誤謬の源があると思われる。実在する対象の合同を云々する時物理的な合同の外に尚何物かが考えられていると云うにしてもヘルムホルツによればそれは「認識し得るもの」に就いては何の変りもないと謂うのであるが、併しこのことは合同の概念に物理的合同以外のある他の意味があるということを否定することにはならぬであろう。自然科学的空間説を困難ならしめるものは空間表象が何等固定した完結した者を意味しないという事実である。それ故観察すべき出来事を理解するには吾々は実在界の空間的な表象を全然捨て去って全然抽象的な数学的な形式に拠らねばならぬ。かくしてのみ吾々は真に終局的な実在認識としての「全体的世界形像」に到達し得るのである。然らば時間表象はどうであるか。物理的世界形像が仮定する処の吾々は外界を直接に認識し得るということから、自然科学は認識に現われないものを取扱うことは出来ぬということが引き出されるのであるが相対性原理は正に之によって成立する。