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キドこうか

キド効果

海野 十三

「新青年」1933(昭和8)年1月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 12,298 字 · 25 页

青空文庫

4

この曲線を一と目見れば、其の人間に宿っている興奮が手にとるようにアリアリと判る。そこで次の Fig. 2 Fig. 3 も、同じ手段で興奮曲線をとることが出来たのじゃ」

測定者・木戸――とサインされてある此の貴重な三つの曲線の意味は、漸く助手の丘数夫の頭脳に朧気ながら理解されるに至った。しかしAとかBとかCとかいう興奮の種類は、じたい如何なる興奮を示すのであるか、容疑者の烏山とは誰か、磯谷とは、犬塚とは?

4

「先生」と丘助手が呼びかけた。

「うふふん。――」と博士は咳払いをもって答えられたが、講義の腰を折られたことを腹立たしく感じていられることは、その咳払いの調子からソレと察せられるのだった。

「先生。これは例の興安嶺殺人事件と関係のある問題なのでございますか」

「……」博士は無言で、暫しは口をモゾモゾせられたが、これは変者をもって鳴る博士の性状として「然り」を意味するものに外ならぬ。「それで三十九人の同車していた連中について、この興奮曲線をとったのじゃが……」博士の話はイキナリ実験の話へ飛んだのである。

博士としては無理もないことである。理学博士木戸信之氏は真面目なる学徒以外の何者でもない、随ってシャーロック・ホームズでもファイロ・ヴァンスでも、また帆村荘六でもないから、事件の続き具合などを話す気持はない。