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ゴールデン・バットじけん

ゴールデン・バット事件

海野 十三

「新青年」1933(昭和8)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,946 字 · 46 页

青空文庫

「これは何か鈍器でやられたもののようですネ。余程重い鈍器ですナ、頭の方よりも、左肩が随分ひどくやられていますよ。骨がボロボロに砕けています」

「そうでしょう」と帆村は応えてから、指を側へ向けた。「そこに凶器がありますよ」

「どれです」医師は目をあげた。

「ほら、これですよ」と帆村は二三歩あるいて、床の上に転っている一つの大きい毯のようなものを指した。「外側は御覧のとおり毛糸で編んであります。しかしこれは単なる袋ですよ。中身は鉄の砲丸です、あの競技に使うのと同じですが、非常に重いです。こっちから御覧になると、血の附いているのが見えますよ」

帆村は横の方から凶器の一部を指し示した。

「これは頭部からの出血が染ったのですナ」と医師は云った。

「そうらしいですネ。ときに丘田さん。この死者の致命傷は、やはりこの外傷によるものでしょうか」

「無論それに違いがありませんが、何か御意見でも……」

「意見というほどのものではありませんが、この死者の身体を見ますと、普通の人には見られない特異性があるように思うんです。例えば、中毒症といったようなものがです」

「そうです、そうです」医師はしきりに同感の意を表して云った。