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ゴールデン・バットじけん

ゴールデン・バット事件

海野 十三

「新青年」1933(昭和8)年10月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,946 字 · 46 页

青空文庫

「そう仰有れば申上げてしまいますが、実はこの金さんはモルヒネ剤の中毒患者ですよ」

「ほほう、貴方のところへ、治療を求めに参りましたか」

「そうなんです。実はこの四五日この方ですがネ」

「今日も御覧になりましたか」

「今朝診ましたよ。大分ひどいのです。普通人の極量の四倍ぐらいやらないと利かないのですからネ」

「四倍ですか、成程。――」

帆村はケースから一本の巻煙草を引張りだすと、カチリとライターで火をつけた。そしてそれっきり黙りこくって、ただ無闇に紫の煙を吹いた。それは彼がなにか大いに考えるべきものに突き当ったときの習慣だった。

そのとき、大通りの方から、けたたましい自動車の警笛が入り乱れて聞えてきた。それはアパートの前まで来ると、どうやら停った様子だった。間もなく階段をのぼるドヤドヤという物音がして、この事件を聞きつたえた警視庁の係官や判検事の一行が到着したのだった。

「やあー」

「やあ、先程はお報せを……」

大江山捜査課長は、この事件を帆村から報せて貰ったことに礼を述べた。

「ときにどうです、被害者の容態は」

「間もなく絶命しましたよ。とうとう一言も口を利きませんでした。