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ゴールデン・バットじけん
ゴールデン・バット事件
海野 十三
「新青年」1933(昭和8)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,946 字 · 46 页
彼の抱いていった薄刃の短刀に血を衂らず、あの重い砲丸を投げつけて目的を達したことは、後に捕縛されたとしても、短刀をまだ使っていないという点で、犯行を否定するつもりだったという。それを最初から指摘したところの検事は、大変鼻を高くしていた。
かくて事件は表面的には解決したが、私としてはお察しのとおり、いろいろの疑問が不可解のまま解決されていないので、大いに不満だった。
そして思いは帆村の場合も同じであった。その帆村は、海原力三の自白後、随分しばらくやって来なかったが、そうそう、あれは一ヶ月ほども経った後のことだったろうか、莫迦にいい機嫌で私の許へ訪ねてきた。
「オイ何処へ行ってたのか」
と私は帆村の鬚を剃ったあとの青々とした顔を見上げて云った。
「うん、東京にいるのが嫌になって、旅に出ていた。実は神戸の辺をブラブラしていたというわけさ。あっちの方は六甲といい、有馬といい、舞子明石といい、全くいいところだネ」
「ほう、そうか。じゃ誘ってくれりゃいいものをサ」
「ところがブラブラしていたとはいいながら、波止場仲仕をやっていたんだぜ」
「波止場仲仕を、か?」
私は直ぐ帆村の意図が呑みこめた。