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ゴールデン・バットじけん
ゴールデン・バット事件
海野 十三
「新青年」1933(昭和8)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,946 字 · 46 页
私達はやっと片隅に小さい卓子を見付けることが出来た。
「ああら、いらっしゃい」
そういって通りすぎたのは、チェリーだった。カクテルの盃を高くささげて、急ぎ足に通りすぎた。背後から眺めるとワン・ピースが、はちきれそうにひきしまって、彼女の肉体があらわに透いて見えそうだった。
「ありゃチェリーさんだネ」
「うん」
「暫く見ない間に、大変肉づきが発達したじゃないか。まるで別人のようだ」
「そうだネ」私は或ることを思い浮かべて、胸の締めつけられるのを覚えた。
「まあ、いらっしゃいませ」そこへ君江がやって来た。「先刻はどうも……」
君江が帆村にそういって挨拶をした。オヤオヤと思って私は帆村の顔を見た。
「む――」帆村は白っぱくれて、ホープの煙幕の蔭に隠れていた。
注文をきいて、君江が向うへゆくのを待ちかねて私は口を切った。
「今のはどういう訳なんだ、『先刻はどうも』というのは」
帆村はニヤリと笑って、灰皿に短くなったホープを突きこんだ。
「君は覚えているだろう」と彼は声を墜として云った。「あの金という惨死青年が或る中毒に罹っていたことを」
「ひどいモルヒネ中毒だというんだろう」