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ゴールデン・バットじけん
ゴールデン・バット事件
海野 十三
「新青年」1933(昭和8)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,946 字 · 46 页
「その方法は?」
「それは詳しく云うことを憚るがネ、とにかくその薬の入った巻煙草――あの場合ではゴールデン・バットだが、そのバットの切口のところは、一度火を点けて直ぐ消したようになっているのだ。金のやつは、こうした仕掛けのある煙草を吸っていた」
「そりゃ、うまいのだろうか」
「モルヒネ剤特有の蠱惑にみちた快味があるというわけさ。ところが金という男は頭がよかったと見えて、それを自分だけに止めず、ゴールデン・バットの女たちに秘かに喫わせたのだ。女たちは、真逆そんな仕掛けのある煙草とは知らず、つい喫ってしまったが、大変いい気持になれた。それでうかうか何本も貰って喫っているうちに、とうとうモヒ中毒に懸ってしまった。さアそうなると、今度はどうしても喫まなければ苦しくてならない。仕舞いには、あの仕掛けのある煙草のことを感づいたのだろうが、そのときはどうにもならないところへ達していた。女たちは金に殺到して、そのゴールデン・バットを強要した。金としては思う壺だったろう。バット一本の懸け引きで、気に入った女たちを自由に奔弄していったのだ」
「そうだったか――」私は深い嘆息と共に、あの死んだ金が素晴らしくもてていた其の頃の情景をハッキリ思い出した。