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ゴールデン・バットじけん
ゴールデン・バット事件
海野 十三
「新青年」1933(昭和8)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,946 字 · 46 页
見ていると、フワーッと脳貧血が起りそうになった。それほどむごたらしい傷口だった。
「おお、金さん。可哀想に……」と番人は声を慄わせた。「助かりますか」
「金さんというのかネ」と帆村は云った。「金さん、まだ脈が続いている。無論意識は無いがネ。至急医者だ、警察も急ぐが、それより前に医者だ」
「医者は何処が近いですか、爺さん」私は番人の腕をとった。
「医者はあります。ここを向うへ三町ほど行ったところに丘田さんというのがある」
「じゃ爺さん、ちょっと一走り頼む」
「わしは、どうも……」
番人は尻込みをした。その結果、どうしても私が行かねばならなくなった。医師のところへゆくとすれば、怪我人の様子をよく見て行って話をせねばならないと思ったので、私は無理に気を励まして、血みどろの被害者の顔を改めて見直した。
「おお、これは……」
と私は駭きに逢って、とうとう声に出した。
「どうした、オイ。知り合いか」と帆村も駭いて私の肩を叩いた。
「これあネ」私は彼の耳に口を寄せた。「これあ先刻云ったゴールデン・バットの君江とややっこしい仲で評判の男さ」
2
私は医者を迎えるために、外へ飛びだした。