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ゴールデン・バットじけん
ゴールデン・バット事件
海野 十三
「新青年」1933(昭和8)年10月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 22,946 字 · 46 页
だから、一つ又一つと苦心をして新手の方法を考えなければならない。最近ではエドガア・ポオもどきに、密輸入品を人目につかぬ所に隠す代りに、反って人目に極くつきやすいところへ放り出して置くのが流行っていると、こんな話を面白可笑しく、この海原力三という船員が話して聞かせた。
さて例の金青年と来ると、身体が大きいばかりで男前がよいというのでもなく、スポーツマンらしい垢ぬけたところがあるのでもなく、どちらかと云えば男として美の要素の欠けた青年だった。迚も海原力三などとは、恋の競争などは思いもよらぬ劣勢者と思われた。それがあのカフェ・ゴールデン・バットの女にもてること大変なものだった。金が入って来ると、十人近い女は自分の持ち番の客の有る無しに係らず、ドッと喚いて一斉に彼に飛びついてゆくという騒ぎである。それがなんとも形容しがたいような嬌声を張りあげて、あっちからも、こっちからも金の胸にぶら下るのだ。まるで一つの麩を目懸けて、沢山の緋鯉真鯉がお互に押しのけながら飛びついてくるかのように。
そのときに金はどんな顔をしているかというのに、一向嬉しそうにも楽しそうにも見えないのだから不思議である。