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ジャンのものがたり
ジャンの物語
宮本 百合子
「婦人公論」1937(昭和12)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,273 字 · 13 页
フランスは周知のとおり、昨今思想的にも実践的にも民衆の進歩的な意志が益々結合せられ、活溌に向っている。そのような社会事情にかこまれながら、孤児院出のジャンが、この如き経験をなめていることにも、私たちの心は様々に動かされる。
華やかで遊惰な雰囲気のニースでバルコンある別荘に住み、恐らくはロシアからかくしてもって逃げて来た金袋を減らしながら、思い出がたりで暮していたであろうお祖母さんオリガの、嘗てあった生活の幻を注ぎこまれて、中途半端な育ちかたをしたことは、ジャンにとって親を失ったより大きい客観的な不運である。地べたいじりがいやでたまらぬジャンの気持。農民の武骨な感情表現になれることの出来ないジャンの都会気質と或は決してなくはないかもしれぬ自分の出生にこだわった心持。これらのこともジャンの持つ負け札として見のがせない。
ただ、ジャンが機械工になりたくて仕方がなく、その方面では技術をさずけられ自信ももっているのに、教化所が一つの慣例のように農家へばかり委托する為に、ジャンの生活が破綻してゆく点を、私は心から哀れに思う。
アブデェンコの小説「私は愛す」