轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ジャンのものがたり

ジャンの物語

宮本 百合子

「婦人公論」1937(昭和12)年12月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,273 字 · 13 页

青空文庫

この「ジャンの手記」が私たちに与える教訓は決して感傷的な系図しらべにもないし、所謂浮世の転変への愁嘆にもない。妻としての良人への愛情。母としての愛情。又は所謂家庭を守る、ということの真の意義、真に聰明な洞察は果してどういうところにあるのであろうかということについての、真面目な省察を促がされるところにあると思う。世俗的なかためかたでは、現実の推移がもたらす主観的な幸、不幸はふせげない。終極における愛とは、妻の愛にしろ、母の愛にしろ、波瀾にめげず、社会と自分との裡にあるより人間的な可能性を見きわめ、その実現のためにこの世を凌いでゆける沈着、快活な勇気と精励とを愛する者の心に湧き起す泉の様なものでなければならないのではあるまいか。妻なり母なりとしての自分がいるからこそやってゆけるという事情は一応女の心を満足させ自信をも与えるかもしれない。だが真に聰明でありまめである愛は、そこではまだ安心しないと思う。

もしジャンの不幸を、ただ孤児となったからというだけの原因で見るとしたら、それは浅い観察であると思う。ジャンに、お前は不幸になんかならないでやってゆけるのだぞ、と励まし、その方向を示してやる者がいなかったことの方が寧ろ本質の不運である。