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ジャンのものがたり
ジャンの物語
宮本 百合子
「婦人公論」1937(昭和12)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,273 字 · 13 页
が反映しているのである。
恋愛に対し、婦人に対して、トルストイの抱いていた宗教的・道徳的見解を今日から見れば或る意味で主観的であり独断的である罪業感であったと云える。貴族の夫人、娘としての周囲の日暮しにも批判をもち、子供を生み、それを辛苦して育てることばかりが、性の放逸と女の下らなさを浄化するという風に考えていたのであった。社会的な規模で婦人の生活は考えられず、ジョルジ・サンドをも嫌悪した。この婦人に対する一見知的で実は感覚的なものの上に立つ思想はトルストイの全芸術を貫く一つの著しい基調となっている。
トルストイアンと称する連中(ゴーリキイの観察によれば、その大部分が鼻もちならぬ連中であった)にとりかこまれ、無抵抗主義の信条で、全財産を放棄したがっているトルストイの希望に、怯え、憎悪し、それとの闘争に立ち向った第一の人は夫人ソフィヤと五男のアンドレイであった。ソフィヤ夫人は、子供等に対する家庭の父親の義務としてトルストイを責め、その考えに反対してアンドレイを先頭に立てた一群の息子たちは、当然息子に分けられるべき財産を、トルストイのとりまき共に横領されまいとする息子の権利の上に立って。