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ジャーナリズムざっかん
ジャーナリズム雑感
寺田 寅彦
「中央公論」1934(昭和9)年4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,682 字 · 21 页
あまりの奇問ばかりで返答ができないからほとんど黙っていたのであるが、翌日のその新聞を見るとその記者の発した奇問がすべて筆者によって肯定された形で、しかもそれは記者の問いに対する筆者の答えとしてではなく筆者自身が自発的に滔々と弁じたような形式で掲載されていた。そうして「異変」という言葉がなんべんとなく記事の間に繰り返されているのをなんのことかとよく考えてみたら、それは「イオン」のことであったのである。
このごろの新聞の科学記事には、そういうのは容易に見当たらない。それというのも大概は科学者自身に筆を執らせてそれを掲載するという賢明な方法をとっているので、そんな滑稽な記事はありにくいわけである。しかし今でも科学者でない新聞記者の手になったらしい記事の中には時々おもしろい実例が見つかるようである。たとえば、つい近ごろ二三新聞に「重い水」のことが出ていた。たぶん外国からの通信の翻訳であろうと思うが、あの記事なども科学者の目には実に珍妙なものであった。よくよく読んでみるとなるほど重い水素Dからできた水のことと了解されるが、ちょっと読んだくらいでは実に不思議な別物のような感じを起こさせるという書きぶりであった。