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ジロリのおんな
ジロリの女
前半「文藝春秋 第二六巻第四号」1948(昭和23)年4月1日、後半「別冊文藝春秋 第六輯」1948(昭和23)年4月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 51,597 字 · 102 页
私の思慕の切なさは、たまらなくなった。思いきって、ヤス子に逢いたい決意をかためた。ヤス子の怒りと憎しみを見ることがどれほど苦しいものであっても、ヤス子を一目も見られぬ怖れの苦しさが切なくなっていたからだ。
私たちは東京へもどり、私はヤス子に電話をかけた。
私はヤス子が現れたとき、顔をあげることができなかった。
美代子がヤス子にすがって泣いている。私はそれも見なかった。私はついに、最初の視線がチラリと合って顔をそむけてのちは、どうしても顔があげられず、その方にからだを向けていることすらもできなかった。
私は顔を伏せてそむけたまゝヤス子に近づいて、胸のポケットのハンカチをとりだして突きだして、
「美代子さんと、このハンケチとを、あなたに返えすよ。おわびする。どんな憎しみも軽蔑も、容赦なく、私はみんな受けます。そして、どうか、行って下さい」
ヤス子が私に近づき、私の正面に廻った。私はそれにつれて、からだを横にずり向けた。ヤス子はそれを追い、正面へ正面へと廻ろうとしていたが、あきらめて、止った。
「美代子さんをお返しして、すぐ、また、来ます。こゝに待っていて下さい」