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ジロリのおんな

ジロリの女

坂口 安吾

前半「文藝春秋 第二六巻第四号」1948(昭和23)年4月1日、後半「別冊文藝春秋 第六輯」1948(昭和23)年4月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 51,597 字 · 102 页

青空文庫

それは何か「なつかしさ」というものゝ総量のような感覚であった。ほかに思うこともない。私はボンヤリ酒をのんだ。

★

その翌日は忙しい。私は衣子との約をまもって、旅行に不参しなければならないのだが、私は然し、私の行かないことは構わぬけれども、大浦博士とヤス子のことを考えると、我慢ができない。

私は出社して局長をよび、

「私は明日の旅行には行かないよ。私の行かない方が、みんなの慰安にもなるだろうよ。ところで、大浦博士だがね、こいつを君の力でなんとかゴマカしてくれないかね。この先生はヤス子さんが狙いなのだから、私はヤス子さんにムネを含めて、これも不参ということにしていただくつもりだが、まったく君、この先生にのさばられちゃ、たまったものじゃアないからな。君たちだって、やりきれないだろう」

そこで局長と相談して、ひとつ大浦博士をこの機会にコラシメのためナブリモノにしてやろう、というわけで、伊豆へつれだしておいてから、実は社長とヤス子さんは、おくれてくる筈、ほかに宿をとっている筈ですがね、慰安旅行の邪魔にならないように、最後の日にチョッとだけ顔をだすようなことを云ってましたぜ、昼はどことかのお嬢さんの行方を探しているそうです、と言ってもらうことにした。