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スモーリヌイにひるがえるあかはた

スモーリヌイに翻る赤旗

宮本 百合子

「大阪毎日新聞」1931(昭和6)年1月5日~21日号(15日号、19日号を除く)

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,354 字 · 51 页

青空文庫

レーニングラードへ

夜十一時。オクチャーブリスキー停車場のプラットフォームに、レーニングラード行の列車が横づけになっている。

麻袋。樺の木箱に繩でブリキやかんをくくりつけたもの。いろんな服装の群集は必要以上にせき込み、頸をもち上げて前の方ばっかり見ながら押し合った。

三等車は鋼鉄だ。暗い緑色に塗ってある。プラットフォームの屋根の直ぐ下に列車の黒い屋根があり、あたりはあまり明るくないところへ、並んでるどの車もくすんだ色だから陰気に見えた。

国立出版所に働いてるナターリアが、

――所書なくさないようにね、ああ、それから荷物のそばにきっと一人いるようになさい。

手と異常に大きい眼とで別れの合図をした。が、それは、すぐ見えなくなってしまった。

入って見ると、三等車の内部は暗いどころではなかった。ごく清潔な家畜小舎に似てる。黄色くひかっている。坐席は二段になって、上の方でもゆっくり寝られるようになっている。二人の日本女は向いの羽目にろうそくを入れた四角なカンテラの吊ってある隅の坐席におさまった。

その車はすいていた。

間もなく一人若い女がやって来て、日本女の前へ席をとった。