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スモーリヌイにひるがえるあかはた
スモーリヌイに翻る赤旗
宮本 百合子
「大阪毎日新聞」1931(昭和6)年1月5日~21日号(15日号、19日号を除く)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 25,354 字 · 51 页
赤い布で頭を包んだ婦人郵便配達が、ベンチの上へパンパンに書附類の入った黒鞄をひろげいそがしそうに何か探している。太い脚を黒い編あげ靴がキュッとしめている。
いそぎ足でいろんな人間が廊下をとおった。みんな、この大きな建物内にある無数な室それぞれの場所、職務をよく知っているらしい様子である。
日本女は右手の受付へ行った。
――百二十四番の室の許可証を下さい。
ゴム印をおし、番号を書いた紙片を貰って、さらにもう一枚ガラス戸をあけて、表階段をのぼって行った。
二階の壁に、絵入りのスモーリヌイ勤労者壁新聞が張り出してある。
スモーリヌイの外観は快活である。そのように内部も清潔で、白い。極めてさっぱりしている。
三階の廊下へ入るところに、赤衛兵が番をしている。許可証を赤衛兵にわたした。婦人部金文字の札が出ている。戸がかたい。うんと力を入れて開けたら日本女がびっくりした程ひどい音がした。
事務机。二つの電話。大きな紙屑籠、重ねあげられた書類、ひとり女が仕事している。
――御用ですか?
赤鉛筆で何か書類に棒をひきながら、
――対外文化連絡協会から電話があったろうと思いますが……日本から来たものです。