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ズラかったしんきち
ズラかった信吉
宮本 百合子
「改造」1931(昭和6)年7~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 54,656 字 · 110 页
工場から帰って来ると、信吉は自分の室の寝台に仰向にころがって、よくその日の出来事、些細な言葉とか心にのこってる印象などを考える癖がついた。
後で、ひとりでに思い出せるような際だった事柄をたどって見ると、キット、どんづまりは、光みたいに力づよく漲って、みんなを引っぱっているものにぶつかる。
これこそ、〔四字伏字〕プロレタリアートの階級の力だ。が、その力もいわれなしには来ない。力となる科学的な理論があるからだ。ストライキ。〔二字伏字〕。〔三字伏字〕。現在の目醒ましい社会主義建設と水火をくぐって、〔十一字伏字〕のものと極めのついた指導理論を、みんなが腹にいれてるからこそ、ジリリ、ジリリとブルジュアどもを地球の上から押しのけ出したんだ。
この頃んなって、信吉は、〔八字伏字〕というものについて、自分がどんなウソ八百をきかされ、嚇かされていたか、つくづく知った。
ブルジュアは、〔五字伏字〕がホントに〔九字伏字〕するもんだと知ってるからこそ、その運動を搾め殺そうとするんだ。
太陽は八月の太陽だが、空に秋らしい小さい白雲が浮いてる。楡の枝が、横に張った古い板塀越しにサヤサヤ揺れてる。