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ズラかったしんきち

ズラかった信吉

宮本 百合子

「改造」1931(昭和6)年7~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 54,656 字 · 110 页

青空文庫

「……話わかるのか?」

「通じるよ」

すると、鞣の前垂れをした四十がらみの骨組みのがっしりした労働者が、

「お前、何てんだ?」

ときいた。

「シンキチだ」

「よし、よし。じゃあシンキーチ、きかしてくれ。お前ん国なんだね、〔四字伏字〕か?」

テーブルへ肱をついて信吉の方を見ていたカーキ色シャツの青年共産主義同盟員らしいのが、それをくだいて、

「〔九字伏字〕? まだ。それとも〔三字伏字〕か?」

と云った。

「〔八字伏字〕」

ガヤガヤみんな一時に口をきいた。

〔四字伏字〕なんだ。

そうじゃない。日本には〔十七字伏字〕、〔四字伏字〕だよ、今は。

「まあ、いいや。……それで、赤色職業組合なんかあるか?……メーデーにデモンストレーションやるんか?」

「ああ。トラックで一杯〔六字伏字〕」

ドッと愉快そうにみんなが互に顔を見合わせながら笑った。鞣の前垂れかけたのが、信吉の肩をたたきながら、

「ナーニいいさ? 今に見てろ。〔十六字伏字〕」

ギューッと曲げて力瘤の出た二の腕を、ドスンドスンと叩いて見せた。

「わかるだろ? そして、〔十三字伏字〕。そのとき、こっちじゃ五ヵ年計画を三つも四つもやっといて、飛行機で〔十二字伏字〕!」