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ズラかったしんきち
ズラかった信吉
宮本 百合子
「改造」1931(昭和6)年7~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 54,656 字 · 110 页
菜っ葉服にオガッ屑をつけ、鳥打帽をかぶった鼻の赤い木工らしいのが、
「おめ、おめえんとこに、飛、飛行機あるかね?」
と吃りながらきいた。
「勿論あるさ!」
信吉は力をいれて答えた。
コムソモーレツらしいのが口を入れた。
「日本の〔四字伏字〕工業技術は進んでるんだ。水力電気も発達してるんだぜ」
暫く、みんな黙ってたが、木工が、
「おおお前の方じゃ、ど、どうだね、大体食糧なんざ、た、たんとあるかね?」
忽ちすべての目が信吉に向ってシーンと引きしまった。飾りのないとこ、これは今のみんなが注意ぶかくきかずにゃいられないことなんだ。信吉にはソヴェト労働者のその心持も、事情も親身に察しられる。信吉自身だって、アルハラの山奥から、いいことずくめを想像してモスクワへ来たときにゃ食糧難で実はびっくりしたんだ。
「日本に食糧はうんとあるんだ。だが、どうにも銭がねえ。……わかるか、俺のいうこと」
信吉はグルリとみんなを見まわし、
「――これが、ねえんだ」
指で円く形をして見せた。
「……失業が多いのかい?」
「ひでえ。ソヴェトじゃ、食糧の切符でも、とにかく労働者が第一列だ。〔四字伏字〕、〔六字伏字〕。