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ソヴェトのしばい

ソヴェトの芝居

宮本 百合子

「改造」1931(昭和6)年3、4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 26,289 字 · 53 页

青空文庫

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メイエルホリドは昔、モスクワ芸術座にいたことがあった。そこを出て、一九〇〇年代がはじまったばかり――ゴーリキーがそろそろ小説家として働きはじめる頃のロシアのどこかを放浪していた時分、まだチェホフが生きていた。チェホフもメイエルホリドの才能は感じていたと見える。誰かにあてた手紙の中に、チェホフらしい内輪な云いぶりで「彼の本当の道を発見させてやりたい」と書いた。

われわれにとって意味ふかく考えられるのは、このチェホフのこの単純に云われているが重大な言葉が、今日のメイエルホリドにとっても、まだ決定的に答えられていない点だ。

同じ頃モスクワ芸術座にいたスタニスラフスキー、メイエルホリドより年もずっと上だが、モスクワ芸術座のリアリズムを確立させ、しかも「装甲列車」などでは着実な発展の可能を示していた。ソヴェト同盟の「人民芸術家」としてもう完成された演出家である。現在のスタニスラフスキーに動揺する要素や未知を感じてこの先彼がどうなろうかと、心配したりする者はソヴェトの観衆の中にまあないだろう。

メイエルホリドも、「人民芸術家」だ。ソヴェト同盟から、革命前及革命後の彼の演劇に対する探究的な努力に対して、その最高の称号を与えられた。