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ドミノのおつげ
ドミノのお告げ
久坂 葉子
「VIKING 17号」1950(昭和25)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,713 字 · 42 页
「惜しいな」
と時々申します。東さんは、一つ一つゆっくり観察しました。
「全部で二万三千円」
東さんはそう云いました。私も父も少なくとも三万円にはなると思っていたのです。私は病のため剃ることも出来ないで白くのびた父のひげのあたりをみておりました。父も私の顔をみます。
「だって東さん、これ値うちものよ。茶碗だって、あんたんとこのあれよりずっといいことよ」
私はお腹の中で一つ一つを勘定しながらそう云いました。
「でもね。こんなものは、すぐうれないのでね。……これが四千円、これがまあ八千円、セーブルはさっぱりなんでっせ。印象の色紙、三千円ね。後は全部で八千円。随分ふんぱつでっせ」
私は、床に今掛けた山水の絵をみます。箱の上においた茶碗をみます。父は黙っております。
「東さん、この壺はあんまりやすい。せめてこの小さいものを全部で一万二三千はほしいわよ」
あれこれ、東さんと云い合っているうちに私も、もうどうだっていいという気持になりました。いくらに売れても同じです。一週間食べのびるか否かなのですから。結局二万五千円で話がつきました。父も、それでいいと云うのです。東さんは話し終ると一服煙管にきざみをいれて、ぷうっと美味しそうに吸いました。