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ドミノのおつげ
ドミノのお告げ
久坂 葉子
「VIKING 17号」1950(昭和25)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,713 字 · 42 页
昔長く家にいた女中が、午後来てくれて、私は、すっかり用事をまかせて、又自分の部屋に戻ると、ふたたび、父についての思い出をたぐりはじめました。父と私は、新緑の奈良や、紅葉の嵯峨野をよく散策しました。古寺を尋ね、その静かなふんいきの中で色をたのしんだり、形を眺めたりしたのです。
「母様とね。まだ結婚して間なし、こうやって奈良や京都をあそんだ事があるんだよ。母様はつまらなくて仕方がないという風でね、父様が一生懸命、建築の話をしているのに、居眠りはじめたこともある。かなしかったよ」
そう言って父はさみしく笑ったこともありました。でも、母としても父には不満があったわけなのでしょう。東京で比較的自由な娘時代を送った母にとって、父の趣味は理解出来ず、ダンスや音楽や、そういう方面にうとい父は、ばんからなやぼな男だったのでしょう。公使館のパーティの話をよく私はきかされました。馬に乗って軽井沢をかけまわったこと、大勢の男友達とスキーに行ったり、ヨットにのったりした青春時代。そんな環境のちがいからだけでも父と母とは、とけあうことが出来なかったのは、当然だったでしょう。そして父は母にないものを私に求めました。