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ドミノのおつげ

ドミノのお告げ

久坂 葉子

「VIKING 17号」1950(昭和25)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,713 字 · 42 页

青空文庫

倖せでなくてもいいのです。お荷物が重くてもいいのです。ただ人間が生きるよう生きられさえすれば――。いのちがすりへって行くのを待っているのでなく、それを燃やして、燃しつくすことが出来さえすれば――。しかしそれはこの嗅ぎ薬の匂いのこもっている、祈りのつぶやきの充ちている家の中では、恐らく無理なことなのでありましょう。

「ハート二つ」

「クラブ三つ」

敵方は喰い下って来ます。私と組になった信二郎は、ちょっと躊躇して、私の方を窺うように見ましたが、眼をキラリと光らせて、挑戦するように叫びました。

「ハート三つ!」

「いいわ、クラブ四つよ!」

叔母は追及して来ます。信二郎とまた眼が合いました。クラブで戦って勝てる見込みはありません。かと云ってハートを四つまでせりあげて戦えるでしょうか。信二郎の顔に追いつめられた苦悩の色がありありと現われていましたが、その顔がフッと明るいものに変りました。それは私の気持が変るのと同時でした。やりましょう姉様、踏切りが大事ですよ。とその顔は言っています。

「ハートの、四つ!」

私は叫びました。時間の流れが停ったように思われます。果敢な賭けの世界に身を躍らせてゆくときの、白い閃光のようなものが脳裡を縫って過ぎます。