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ドミノのおつげ
ドミノのお告げ
久坂 葉子
「VIKING 17号」1950(昭和25)年4月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,713 字 · 42 页
ニ長調のロンドです。兄は白い敷布の上に長く寝て、目をつむりながらきいております。
「ねえ、信二郎さんが、ジャズバンドのアルバイトやりたいって雪子に昨夜云ったんだけれど、兄様どうお思いなる?」
「信二郎がかい。夜稼ぐのじゃ大変じゃないか。おそく迄なんだろう」
「でも土曜日曜らしいことよ。それも、きまってあるのじゃなくて……」
「僕のように体をこわしちゃつまらないからな、で何をやるの?」
「スチールギター。借りるんだって。で一二回やれば自分のを買う事が出来るっていうの」
「まあ、場所が場所だから、僕は反対だけれど……。でも二年間も世間と没交渉なんだからな、口はばったいことは云えないね。僕なんか気持は世間からみれば馬鹿な、時代おくれなものだろうし……」
「兄様、そんなことはないわ。どんな世の中になっても兄様はモーツアルトの音楽を愛する方でなきゃ……」
私は兄の部屋を改めてみまわしました。中宮寺の観音像やモーツアルトの肖像の額がかけてあります。その下には、外国の絵の本やカタログや、レコードの類がぎっしりあります。この夏、皮表紙のルーブルのカタログを売ろうと云い出した時、兄は怒ったように私の顔をにらんでおりました。